日本の物価とハイパー・インフレーション

上のグラフは、1997年の物価=1とした時の伸び率を表している。2023年の物価は1997年比で1.08倍(水平線)。ちなみにハイパー・インフレーションは、1年で130倍と定義されており、垂直線のグラフになる。
アジア・オセアニア 6ヵ国の物価

2023年/97年比でみると、オーストラリアと韓国が2.0倍、ニュージーランドとマレーシアが1.8倍。27年間で1.08倍という日本の物価上昇率は、突出して低いことが分かる。
アメリカ大陸 4ヵ国の物価

2023年/97年比でみると、アメリカが1.9倍、カナダが1.7倍。バブルの頃は、東京の方がニューヨークよりも物価が高かった。しかし、この27年で日本の物価水準はアメリカに追い抜かれ、「安いニッポン」と呼ばれるようになった。
ヨーロッパ 7ヵ国の物価

2023年/97年比でみると、イギリスが1.9倍、イタリアが1.7倍、ドイツとフランスが1.6倍。上記掲載しているヨーロッパの先進国はみな1.6倍以上に伸ばしてきた。先進国の中でも唯一、日本は物価を上げることができなかった。
G7の物価上昇率

日本を除くG7は27年間で1.6倍から1.9倍、年率に換算すると、約2%のインフレを辿っている。日本は水平線、ハイパー・インフレーションは垂直線。この2つの両極端の間に、先進国の物価が斜め線で推移している。
日本の物価が全く伸びない理由:需要が供給より少ないため

需要が供給を上回ると、物価が上がる。これをインフレという。ほとんどの先進国では、需要が供給を上回っており、物価が毎年2%ずつ上昇している。

逆に需要が供給を下回ると、物価は下がる。これをデフレという。日本では、需要が供給を下回っており、物価が全く伸びなかった。この需要不足が原因で、日本はGDP、家計消費、平均年収が世界最低水準の伸び率に終わった。
2022年以降のインフレ
日本では長いことインフレは起きなかったが、2022年から様子が変わってきた。

1997年から2021年までは、物価はほぼ横ばいだった。ところが、2022年1月から円安が始まり、ドル円が115円から150円代後半まで進んで、インフレが起きている。
物価と需要の関係
需要が供給を下回っていても、インフレになることがある。
下のグラフは、1997年以降の物価と給料の前年比について、その大まかな傾向を示している。物価と給料は、その国や年によって変動の仕方が異なっている。

2021年までの日本は、物価は伸び悩んでいたが、給料は下がっていた。これは需要の低迷によるデフレである。
2022年以降の日本は、物価は上がっているが、給料の伸びがそれに追いついていない。これは需要の低迷が続いているコスト・プッシュ型のインフレである。
このように日本は2022年を境に、物価を取り巻く環境が変化してきている。しかし、2022年の前と後とで変わらないのは、需要の低迷である。
一方、経済成長している先進国では、物価は上がっているが、給料はそれ以上に上がっている。これは好調な需要によるデマンド・プル型のインフレである。このようにインフレには2種類あり、インフレだからといって、需要が好調であるとは限らないのである。
