長期債務残高の推移
ニュースでよく報道される「国の借金」とは長期債務残高のことを指している。長期債務残高は例えば、次のようなテンプレで報道されることが多い。「2022年現在、国は1257兆円という膨大な借金を抱え、財政破綻も間近に迫っている」。こうした議論を財政破綻論という。
普通国債残高の推移
長期債務残高のうち1番多くを占めるのが、普通国債残高である。2022年現在、普通国債残高は長期債務残高の80%以上を占めている。そのため、この国債の動向が財政破綻の行方を左右している。
「国債の金利が急騰する」という予想
財政破綻論者は、財政が破綻するプロセスを次のように説明している。「このまま長期債務残高が積み上がれば、金利が上がって利払いの負担が財政を圧迫し、最終的に財政破綻が起きる」。こうした彼らの議論は「金利が上がる」というところに根拠を置いている。
「国債の金利は下がってきた」という現実
しかし、財政破綻論者のそうした予想は外れることになった。実際に金利の推移を見てみると、2011年には1%を下回り、2016年には0%を切るようになった。国債の金利は30年以上もの間、下落し続けている。
外れ続けた財政破綻論:債務が増えても、金利は下がる
上のグラフは、国債の金利と長期債務残高を組み合わせたグラフ。「長期債務残高が増加すると、金利は下がる」という反比例的関係を示している。この現実が財政破綻論を反証している。
国債の金利が下がった理由:国債が問題なく消化されたため
財務省が国債の購入者を募集すると、低い金利でも購入する人が集まったため、金利は低いまま推移していた。民間の金融機関や個人、さらには海外の投資家が国債を安全な資産と見做していたため、金利は低いままだった。さらに最近では、日銀が貨幣を発行して国債の購入量を増やしている。
再掲:国債の金利の推移
ニュースでは長期債務残高が取り沙汰されるが、国債の金利について言及しているものは少ない。その理由として挙げられるのが、財政破綻論が経済ニュースの多くを占めていること、そして、より重要なのは、国債の金利が下がった理由を説明できないからである。
[竹下登大蔵大臣の答弁]
なかんずく、財政改革を行って(昭和)65年度には赤字国債から脱却し、そして総体的には公債依存度を下げていくという方向で進むべきであるということが申されておるわけであります。…さて、これをいかなる方法でやっていくかということになりますと、…歳出構造に対して、その施策、制度の根源にさかのぼって徹底的なメスをやっていけ…当面…制度、施策の根源にさかのぼって歳出をカットしていくというところから始めていくべきであるという基本的な考え方に立っております。
第100回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会 第2号 昭和58年9月26日
[中曽根康弘総理大臣の答弁]
行政改革につきましては、臨時行政調査会を設置いたしまして、五次にわたりまして答申をいただきました。政府はその都度、その実行につきまして、いわゆる工程管理表に類すべきものをつくりまして、閣議決定をもちまして公表もし、また、その線に従って進めておるところでございます。まず、財政面から、小さな政府、効率的な政府という要請に従いまして、歳出カットにつきまして全力を注ぎました。これによりまして、予算請求をゼロシーリングあるいはマイナス5%シーリング、あるいは今回はマイナス10%シーリングということを行い、さらに赤字国債発行額を減らしてきたところでございます。
1兆円ずつ毎年減らして努力してまいりました。これが一つ財政面からの努力でありまして、これはやはり臨時行政調査会ができましたから、その大きな力によりまして政府はこれを遂行することができたと感謝しておる次第でございます。
…私が行管長官のときにおきましても第一次のかなりの整理をやり、今回もまた許認可の整理を実行しておる。それと同時に、いわゆる自由化を促進しようというので、データ通信の自由化等についてかなり思い切った措置を講じた点でございます。
…それから、国鉄の改革、電電、いわゆる三公社の問題がございまして、これにつきましては、臨調から方向を指示されておりまして、それで国鉄については監理委員会設置法をつくりまして、監理委員会がいまその法律をつくる準備をいたし、また国鉄の勤勉性といいますか、綱紀の粛正について現に十一項目にわたる監督をやっていただいておるわけであります。
それから、電電、専売につきましては、いま法案をつくる準備を党内でやっております。これは通常国会に提出するべく努力しておるところでございます。 今後年金の問題がございまして、今回公的年金の統合については法案を御審議願っておりますが、これは国鉄等を中心にして焦眉の急を要する問題でありますので、今国会に御提案申し上げ、さらに大きな全面的な年金問題の総合調整という問題は、次の国会にもし間に合えばそれを提出するように懸命の努力をいまやっていただいております。大体以上の路線に従いまして行政改革を進めておるところでございます。
第100回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会 第5号 昭和58年9月29日