デフレ脱却とは、その名の通り、デフレを脱却することである。
では、なぜデフレを脱却しなければならないのか?
日本が長い間デフレを患っていたからである。この経緯を振り返ってみよう。
- 1997年 消費税の増税
- 1998年 本格的なデフレ不況に突入
- 2001年 政府によるデフレ認定
- 2012年 デフレ脱却が経済目標として明確に打ち出される
このようにデフレになったキッカケは、1997年の消費増税からである。そこで1997年の物価=1として、日本と先進国の物価上昇率を比較してみよう。
水平に伸びている線が、日本のデフレを表している。いかに日本のデフレが長期間続いているのかがよく分かる。
デフレ脱却は、経済目標として掲げられているが、デフレに対する問題意識は、十分に共有されているとはいえない。ここからが重要な話になってくる。
需要不足という問題意識
日本のデフレは、なぜ起きたのか?それはモノやサービスに対する需要が供給を下回っているからである。
デフレで需要が不足している状態は、民間が消費や投資を控え、モノやサービスが売れなくなっている状態であり、端的にいえば、不景気なのである。
この需要が不足している状態を解消することが、デフレに対する真の問題意識である。そのため、経済政策の執行者は、需要が冷え込んでいないかどうかを、監視し続ける必要があるのだ。
まとめ
以上をもとに、デフレ脱却について要約しよう。
- 日本は1998年からデフレ不況に突入した
- 政府は2012年からデフレ脱却を掲げている
- デフレに対する真の問題意識は、需要が冷え込んでいるという点にある
2024年1月現在、インフレ率が2%を超えている。このことをもって「デフレ脱却宣言をするべきだ」という議論がある。しかし、これは経済の最も重要なファクター、需要を無視した議論である。需給バランスを把握するには、さまざまな統計を駆使する必要があり、1つの指標だけでは不十分なのだ※。
※デフレ脱却宣言をする上で、政府は4つの指標を掲げている。4つの指標とは、消費者物価指数、GDPデフレータ―、需給ギャップ、単位労働コストである。これらが全てデフレではないと判定されれば、デフレ脱却宣言をしてもよい、という運用がなされている。
※2024年3月、需給ギャップはマイナスとなっており、デフレ脱却宣言の条件を満たしていない。しかし、需給ギャップは、日本の潜在的な生産能力を過小評価している、という欠陥を抱えており、需要が冷え込んでいるにも関わらず、需給ギャップが+判定される危険性を孕んでいる。