春闘とは、毎年2月から3月にかけて、労働組合が経営側に対して、賃金や待遇などの労働条件の改善を要求し、交渉することである。交渉が春の季節に行われることから、春季生活闘争、略して春闘(しゅんとう)と呼ばれている。
最近、大量に報道されている春闘の賃上げは、一部の労働者だけを対象としているため、労働者全体の実態を必ずしも表していないことには注意が必要である。
以下、そのことを明らかにしてみよう。
非労働組合員の存在
2023年の労働組合基礎調査によると、全雇用者に占める労働組合員の割合は16.3%と過去最低となった。全雇用者数は6109万人、労働組合員数は994万人と推定されている。
つまり、春闘の対象外である非労働組合員は、少なくとも5000万人以上いるということになる。こうした人達は、春闘の賃上げの恩恵をダイレクトに受けない人達なのである。
春闘の賃上げ率
厚労省の「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によると、2023年の春闘の賃上げ率は3.6%だった。
この賃上げの回答対象となっている企業は、資本金が10億円以上かつ従業員が1000人以上いる企業であり、360社ほどしかいない。
つまり、春闘の賃上げ率は、労働組合員だけを対象としている春闘の中でも、大企業に勤めるごく一部の労働者だけを反映した数字ということになる。
労働者全体の賃上げ率
労働者全体の賃上げ率を、名目賃金で見てみよう。この統計の労働者全体は、事業所の規模が5人以上、大企業から中小零細企業までを含んでいる。
2023年の労働者全体の賃上げ率は1.17%(暦年)だった。春闘の賃上げ率が3.6%(年度)であることを考えると、労働者全体の賃上げ率は、春闘の賃上げ率に比べて、かなり低いことが分かる。
まとめ
以下、春闘の賃上げ報道の実態を要約しよう。
- 非労働組合員5000万人以上が考慮されていない
- 春闘の賃上げ率は、一部の大企業だけを集計した数値である
- 労働者全体の賃上げ率は、春闘の賃上げ率に比べて、かなり低い
このように春闘の賃上げ報道は、労働者全体の実態を反映していない。局所的な部分だけを取り上げる、こうした過熱報道とは、距離を置いておく必要があるだろう。