1ドル=150円の円安。海外旅行が難しくなっている。
「円安さえ終われば、海外旅行に行けるはずだ」
そう思っている人もいるかもしれない。
しかし、海外旅行を難しくしているのは、円安だけではない。もう1つ挙げられるのが、海外の物価高である。実はこっちの方が、海外旅行を難しくしている。
その背景を書いておきたい。
ニューヨークのラーメン
海外の物価高を紹介するものとして、よく挙げられるのが、ラーメンである。

ニューヨークにあるラーメン店では、豚骨ラーメンが1杯21ドルする。これにチップと消費税を加えると、大体28ドルくらいになる。
現在の150円で換算すれば、ラーメン1杯が4200円もする。100円で換算しても、2800円だ。為替が円高に振れたとしても、普通に高い。
つまり、ニューヨークの物価は、為替に関係なく、東京よりも高いのである。
物価は上がりっぱなし
為替と物価には、大きな違いがある。
- 為替は円高に戻ることもある
- 物価は上がりっぱなし
これは為替よりも物価の方が怖いということを意味している。どういうことかと言うと、短期でみれば、円安の方が旅行予算を押し上げる。しかし、長期でみると、物価の方が負担が重くのしかかるのだ。
海外の物価は、毎年少しずつ上がっているので、その変化に気付きにくい。ところが、10年20年と年月が経っていくと、そもそもの基本的な物価水準が、為替では打ち消しきれないほど高くなるのである。
海外の物価上昇
下のグラフは、97年の物価=1としたときの物価上昇率を示したものである。

ナナメの線が、外国のインフレである。これを見れば分かるように、25年というスパンでみると、海外の物価は上がりっぱなしで、下がっていない。日本人旅行者にとって怖いのは、為替よりも、物価だということを示しているのだ。
日本人が海外旅行に行けなくなる…?
今後も海外の物価が上がり続けていくと、どうなるのだろうか?短期的には為替が円高に振れて、海外旅行に行きやくなる日が来るかもしれない。
しかし、長期的にみると、ハワイやニューヨークのような激高の物価水準が、欧米の主要な先進国から中欧や東欧へと広がり、さらには日本人にとってもまだ行きやすい韓国や台湾、東南アジアへと広がっていく可能性がある。
実際、すでにタイの物価水準は日本に追いつこうとしている。ニュースでよく報道される「外国の物価高」「安いニッポン」、この背景にあるのは、要するに、日本の給料と物価が上がっていないという経済問題なのだ。
この問題を放置すれば、海外旅行に行きたくても、経済的な理由で行けなくなってしまう。そこで処方箋を記しておきたい。
処方箋
経済成長している先進国のインフレは、好調な需要に支えられたものである。

この需要というのが、すごく重要なキーワードになる。というのも需要を温める方法があるからだ。それが経済政策である。
高校の教科書にも書いてあるのだが、不景気で需要が冷え込んでいる時は、減税をやるというのが基本なのだ。海外に行くだけの経済力を取り戻したければ、特に消費税の減税をやらない政治家には投票しないことだ。
繰り返しになるが、需要は大切なキーワードである。人口が減少している外国は、それでも内需を大きく伸ばしている。需要が低迷していても、経済政策で温め直すことができる。問題なのは、その認識が欠けていることなのだ。