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ドイツのGDP成長率と推移、なぜ高いと言えないのか?日本との比較

時事ニュース

ドイツのGDPランキング

ドイツの名目GDPは、2023年に日本を抜いて世界第3位となった。

ドル建2021年2022年2023年
ドイツ4.53兆ドル4.17兆ドル4.35兆ドル
日本5.04兆ドル4.26兆ドル4.21兆ドル

一方、日本の名目GDPは、2021年から2022年にかけて大きく減少しているが、これは円安の要因が大きい。

複数年にまたがるGDPの推移を見るとき、ドル建は、為替の変動を反映してしまう。それを回避するため、以下、自国通貨建で推移を見ることにする。



ドイツのGDP成長率

1997年から2023年までのGDP成長率を自国通貨建で見ると、ドイツは1.97兆ユーロから4.19兆ユーロになり、2.1倍に倍増した。

自国通貨建2023年/1997年平均成長率
ドイツ2.1倍2.95%
日本1.1倍0.33%

一方、日本は544兆円から591兆円になり、1.1倍にしか増えなかった。ドイツのGDP成長率は、日本よりもずっと高いのである。

特に2000年代後半から2010年代にかけてのドイツは、欧州で一人勝ちしたと言われている※1。しかし、これは事実とは食い違っている。



ドイツのGDPの推移

ドイツのGDP成長率は、他の欧州諸国に比べて特別に高かったわけではない。

出典:国連『National Accounts (AMA)』名目GDP 自国通貨建

2023年/1997年で伸び率をみると、ドイツのGDPは2.13倍にしか増えず、他の欧州主要国と比べても低成長だったのである。

自国通貨建2023年/1997年2019年/2009年
イギリス2.85倍1.44倍
フランス2.19倍1.26倍
ドイツ2.13倍1.42倍
イタリア1.94倍1.14倍
日本1.09倍1.13倍

さらに、一人勝ちと言われている期間(2019年/2009年)で見ても、ドイツのGDP成長率はイギリスを下回っており、一人勝ちとは言えないのである。

この低成長だったドイツが日本を抜いた理由は、あまり深掘りされていない。そこで、その理由を明らかにしていきたい。


日独伊の緊縮財政という共通点

ヨーロッパの中で、GDP成長率が低いドイツとイタリア。これに日本を加えた3ヵ国は、共通点を持っている。

出典:IMF『General government total expenditure』自国通貨建

この3ヵ国の共通点は、政府が支出額を抑制する、緊縮財政だったことである。この緊縮財政が原因で、3ヵ国の経済成長率は低かったのである。


逆に、この3ヵ国の相違点は、財政拡大率に大差がついている事である。2023年/1997年でみると、ドイツとイタリアが2.1倍、日本は1.3倍だった※2

ドイツは日本に比べて、財政拡大率で大差をつけていたため、経済成長率でも大差をつけ、GDPの順位を追い抜いたのである。



まとめ

以下、この記事を要約しよう。

  • 「ドイツの一人勝ち」は不正確な報道※3
  • 日独の共通点は、GDPの低迷と緊縮財政
  • 日独の相違点は、GDP成長率と財政拡大率
  • この財政拡大率の差がGDPの順位逆転をもたらした


日独の財政拡大率が大きく異なることは、あまり知られていない。もう1度書いておこう。ドイツの財政拡大率は2.1倍、日本は1.3倍。そして、ドイツのGDP成長率は2.1倍、日本は1.1倍である。

緊縮財政・低成長のドイツが、緊縮財政・低成長の日本を追い抜いた。これがGDPの順位が逆転されたカラクリである。







※1 ドイツの1人勝ち報道は、NHKをはじめ、主要なメディアが大量に報道している。

※2 ドイツ経済の堅調さを言い張るための根拠として、財政収支の黒字がよく持ち出される。しかし、その財政収支の黒字化のために緊縮財政をやった結果、ドイツは経済成長できなかったのである。

※3 ドイツは緊縮財政派にとって、財政規律を守る手本として繰り返し引用され、政治利用されてきた。オールド・メディアは「緊縮財政で経済が成功しているドイツ」という虚像を植え付けるために「一人勝ち」という耳に残りやすい言葉を連呼していたのである。

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