消費減税3案の実現可能性
この記事では、消費税の減税が実現可能なのかどうか、を検証する。
- 食料品の減税
- 5%一律減税
- 10%一律減税
ここでは増税や歳出削減は行わずに、国債の増発で対応するとしよう。
その場合、税収が減った分だけ、政府債務は増加する。この政府債務の増加率を見ることで、消費減税3案の実現可能性を検証していきたい。
消費減税による税収減の計算
消費税を下げると、税収はいくら減るのか?
東京財団のレポートによると、その簡便な計算式が紹介されている。
現在消費税標準税率1%あたりの税収はおよそ2.7兆円、軽減税率1%あたりの税収は6000億円と言われている。したがって食料品を0税率にする場合には、4.8兆円の減収になり、消費税率全体を5%に軽減した場合には、機械的な試算として、2.7×5+0.6×3=15.3兆円の減税になる。
消費税減税論の疑問 東京財団
まとめると、こうだ。
- 食料品の減税 税収▲4.8兆円
- 5%一律減税 税収▲15.3兆円
- 10%一律減税 税収▲24.9兆円※
※消費税収見通し24.9兆円 国の税収、過去最高
ここでは国債の増発で対応することを考えているため、政府債務は、上記の減収分だけ増加することになる。
一般政府総債務の計算
IMFによると、2026年暦年の一般政府総債務は1493兆円と推計されている。
そして、2026年の元旦に消費減税を実施した場合、2026年暦年の一般政府総債務は、以下のようになる。
- 食料品の減税 1498兆円(1493+4.8)
- 5%一律減税 1509兆円(1493+15.3)
- 10%一律減税 1518兆円(1493+24.9)
一般政府総債務が一番大きくなるのは、当然、消費税を0%に減税した案である。その場合、一般政府総債務は1518兆円になる。
この1518兆円という規模は、はたして許容できる数字なのだろうか?
一般政府総債務の伸び率の計算
一般政府総債務の伸び率を確認してみよう。

日本の一般政府総債務は、1997年の時点では571兆円、2023年の時点では1420兆円だった。2023年/1997年対比で2.49倍の伸び率である。
この伸び率は、G7の中でも低い。
2026年に消費税を0%に減税した場合は、2026年の一般政府総債務は1518兆円になる。2026年/1997年対比でみると、2.66倍だ。
この伸び率も、G7と比べて低い。つまり、一般政府総債務の伸び率は、消費税を0%に減税して国債で対応したとしても、緩いままなのである。
結論:消費税0%は実現可能
最後に、消費減税3案の実現可能性について要約しよう。
- 消費税を0%にすることは全く問題ない
- 代替の増税は必要ない
- 社会保障の給付を削減する必要もない
- 消費税5%減税案は、一時的な妥協案である
- 食料品の0%減税案は、論外である
朝日新聞の世論調査によると「食料品だけ引き下げ」が最多で33%という結果だった。しかし、食料品の減税による4.8兆円の債務増加は、一般政府総債務の規模からみると、微々たるものにすぎない。
そのため、食料品の時限減税案は、選択肢から外すのが賢明だろう。

