日本のGDP順位の推移
以下、日本の名目GDPが順位を落とした年である。
| 順位を落とした年 | 2010年 | 2023年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 1位 | アメリカ | アメリカ | アメリカ |
| 2位 | 中国 | 中国 | 中国 |
| 3位 | 日本 | ドイツ | ドイツ |
| 4位 | ドイツ | 日本 | インド |
| 5位 | フランス | インド | 日本 |
日本は1968年以来、GDP2位の座を維持してきたが、2010年に中国に抜かれ、3位に転落した。
その後、2023年にドイツに抜かれ、4位となった。さらに2025年にはインドに抜かれ、5位になる見通しとなっている※1。
GDPの順位が抜かれた理由
日本は2023年にドイツに追い抜かれた。
| 兆ドル | 21年 | 22年 | 23年 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 5.04 | 4.26 | 4.21 |
| ドイツ | 4.35 | 4.17 | 4.53 |
その前年の2022年に日本の名目GDPは、大幅に落ち込んでいる。この理由は、為替が110円から150円へと円安になったからである。
ただし「日本がドイツに抜かれた理由は、円安のせいだ」と結論付けるのは、早計である。
GDPの推移を見るときの注意点
GDPの推移をみるとき、ドル建には限界がある。
- ドルは毎年、変動している
- ドル建は、為替の変動を反映してしまう
このようにドル建は、単年度におけるGDPの順位を見るのには適しているが、複数年度にまたがるGDPの推移を見るのには、不向きである。
そこでGDPの推移をみるときは、為替の変動を反映しない、自国通貨建の方が望ましい。
GDPの順位が抜かれた理由:再考
日本とドイツのGDPの推移を、自国通貨建で見てみよう。

日本の名目GDPは、ヨーロッパの主要な先進国と比べても、全くと言っていないほど伸びていない。
参考までに、日独英の3ヵ国を比べてみよう。
| 国 | 23年/97年 | 97年→23年 |
|---|---|---|
| イギリス | 2.9倍 | 0.95→2.72兆ポンド |
| ドイツ | 2.1倍 | 1.97→4.18兆ユーロ |
| 日本 | 1.1倍 | 543→590兆円 |
日本を追い抜いたドイツの経済成長率は、ヨーロッパの中でも高い方ではなく、むしろ低い方に属している。
つまり、ドイツに抜かれた理由は、円安が主因でもなければ、ドイツの経済成長率が高いからでもなく、単純に日本の経済成長率が圧倒的に低いからなのである※2。
まとめ
最後に、日本のGDP順位の推移について要約する。
- 2010年に中国に抜かれ、3位に転落
- 2023年にドイツに抜かれ、4位に転落
- 2025年にインドに抜かれ、5位に転落する見通し
さらに今後、イギリスに抜かれる可能性が出てきている。このように日本の経済成長率の圧倒的な低さが、GDPの順位転落という形で現れている。
昨今、経済政策の転換を求める声が高まっているが、その背景を理解するためには、こうした基本的な事実をおさえておく必要がある※3。
※1 IMFの推計によると、2025年の名目GDPは、インドは4.1870兆ドル、日本は4.1864兆ドルとなり、インドが日本を辛うじて上回るとされている。
インドの経済成長率が予想を下回れば、2025年も4位の座を維持できる可能性もあるが、そうなったとしても2026年には5位になることは間違いない。
※2 日本がドイツに抜かれた理由は、以下を参照。
日本がドイツに抜かれた理由は、財政拡大率の差である。ドイツは緊縮財政と言われているが、日本のそれには敵わない。日本の緊縮財政の度合いは、ドイツよりも遥かに強烈なのである。
※3 日本が経済成長しなかった理由は、経済政策に過失があったからである。具体的には、消費増税と緊縮財政である。しかし、そうした政策を議論するよりも先に、日本経済の現実を事前に知っておくことが重要である。
例えば、こんなふうに考えている人がいたとしよう。
・日本は、そこそこ経済成長している
・この30年で好景気の年もあった
この認識は、全くの誤りである。しかし、こうした認識を抱いている人の割合は少なくない。彼らと政策について議論を交わしても、議論が嚙み合わずに、すれ違いになることが多い。
なぜなら、そういう人たちは、日本が絶望的なまでに経済成長していないことを知らず、経済成長の必要性をあまり感じていないことが多いからである。なので、経済政策の大きな方向性を共有するためには、そもそも論として、日本経済に対する認識を予め共有しておくことも重要なのである。



