アベノミクスの成果とその評価
安倍首相の経済政策、通称アベノミクスの成果は、名目GDPと実質GDPいずれも、G7で二番目に低い経済成長率だった。
以下のグラフは、安部首相が政権を担当した2012年から2019年までの期間でみている(途中退任した2020年を除く)。

この間、日本の名目GDP成長率は1.6%、実質GDP成長率は0.9%で、イタリアをわずかに上回る程度だった。
アベノミクスの経済成長率は、アメリカやイギリスの半分以下となっており、アベノミクスに対する評価は、成功とは言い難いのが実情である※1。
アベノミクスとは何だったのか?
アベノミクスの財政政策は、積極財政と誤解されることが多いが、実際には緊縮財政である。
その証拠に、安部政権下での政府総支出は、G7で二番目に低い増加率となっている※2。

アメリカやドイツは、政府支出を1.28倍に増やしているが、日本は1.08倍にしか増やしていない(2019/2012年対比)。
このようにアベノミクスは、どちらかといえば緊縮財政だったのであり、少なくとも積極財政とは言えず、ましてや放漫財政ではないのである。
アベノミクス「3本の矢」
アベノミクス「3本の矢」とは、3つの経済政策のことを指している。
- 大胆な金融緩和
- 機動的な財政出動
- 民間投資を誘発する成長戦略
このうち機動的な財政出動は、アベノミクスの代名詞となり、「アベノミクスは積極財政」というイメージが定着している。
しかし、これは前掲のグラフでも明らかなように、事実ではない。安部首相は十分な財政出動を行ったわけではないのである。
アベノミクスが失敗した理由
そもそも財政政策とは、金融政策とならぶ経済政策であり、その目的は、需要を喚起させることである※3。
需要が盛り上がると、物価と賃金は、持続的に上昇する。しかし、安倍政権下での8年間、物価の持続的な上昇は起きなかった。
| 暦年 | インフレ率% |
|---|---|
| 2013 | 0.33% |
| 2014 | 2.76% |
| 2015 | 0.80% |
| 2016 | -0.12% |
| 2017 | 0.49% |
| 2018 | 0.99% |
| 2019 | 0.47% |
| 出典:IMF『Inflation rate』 | |
安倍政権下でのインフレ率は、消費税を上げた2014年を除くと、1%を下回っている。供給に対して、需要が十分に温まっていなかったのである。
つまり、アベノミクスが上手くいかなかった理由は、財政出動が不十分だったからであり、さらに致命的だったのは、需要を冷ますような消費増税を2回も行ってしまったからなのである。
※1 この記事では、アベノミクスの評価を単一の指標、GDPで評価しているが、アベノミクスが十分な成果を上げられなかった事は、実質賃金にも現れている。
安部首相は、物価と賃金が上昇する好循環を目指していたが、2012年から2019年までの実質賃金は下落し続けている。特に消費税を上げた2014年に、実質賃金は大幅に下落した。
このようにアベノミクスは、物価と賃金の好循環を作り出すことに失敗しており、経済的に成功したとは言えないのである。
※2 政府総支出とは、中央政府、地方政府、社会保障基金の支出の合計である。要するに、公的支出の総和である。
日本の財政政策が緊縮財政だった期間は、アベノミクスだけに限定されない。緊縮財政は1997年の橋本政権から続く、政策基調である。
政府総支出の伸び率を国際比較したものは、以下を参照。
※3 安部首相は、任期の終わりまでデフレ脱却を掲げていたが、それは裏を返せば、デフレを脱却できなかったことを意味している。
この記事では、アベノミクスが成功しなかったという評価を与えているが、一方で、アベノミクスの評価できる点もあり、それは第一の矢である大規模な金融緩和と、第二の矢である機動的な財政出動を掲げたことで、需要創出型の政策フレームを後世に示したことである。
しかし、安倍首相は、そうした政策のフレームを掲げておきながら、財政政策に関しては実行に移さなかった。これがアベノミクスが成功しなかった理由である。今後、その政策が実行に移されるかどうかが焦点となる。その政策の要は、いうまでもなく、消費税の減税である。
1997年からの物価上昇率を国際比較したものは、以下を参照。



