「物価が高くなった」という実感
下のグラフは、1997年以降の物価と給料の前年比について、その大まかな傾向を示している。物価と給料は、その国や年によって変動の仕方が異なっている。
例えば、経済成長している先進国の場合、物価は上がっているが、給料はそれ以上に上がっているので「物価が安くなった」と感じる。逆に日本の場合、給料の伸びが物価に追いついていないので「物価が高くなった」と感じる。
「物価の体感値」を表す実質賃金
この「物価が高くなった、安くなった」という物価の体感値を表しているのが実質賃金である。実質賃金は、次のような手順で算出されている。
- 現金給与総額(アンケート調査)
- 名目賃金(1を指数化したもの)
- 物価(アンケート調査)
- 実質賃金(2÷3)
以下、現金給与総額、名目賃金、物価、実質賃金の順番でグラフを掲載する。
現金給与総額
現金給与総額とは、基本給、残業代、賞与の合計を月平均にしたもの。1990年以降で1番給料が高かったのが1997年。そこから給与水準は大幅に下落し、2023年は1990年とほぼ同水準に留まっている。
名目賃金(現金給与総額)
名目賃金指数とは、上記の現金給与総額を指数化したもの。賃上げのニュースが2022年頃から大量に報道されているが、まだ十分な伸び率には達していない。
物価
物価は1998年から2013年まで下落基調にあった。しかし、2014年の消費増税と2022年以降のエネルギー・食糧価格の高騰により、インフレ基調が続いている。
物価が高いと感じる理由:賃金の伸びが物価に追いつかないため
ここ30年の物価と賃金の傾向を総括すると、物価は少しだけ上がり、名目賃金は大幅に下がった。結果、実質賃金は下がり続け、物価が高いと感じるようになった(※実質賃金の下落=物価が高くなったと感じる、実質賃金の上昇=物価が安くなったと感じる)。
補足データ:2023年は実質賃金の下落幅がワースト3位
1990年以降、実質賃金の下落幅が大きかった年をみると、消費増税でデフレ不況に突入した1998年、リーマンショックが起きた2009年、消費税を上げた2014年、そして2023年は、その3つの年に並ぶくらい経済的に厳しい年になった。
この実質賃金の下落を食い止める最も有効な方法は、2014年と1998年を見れば分かるように、上げた消費税を下げることである。逆に消費減税(と積極財政)をやらなければ、物価の上昇が好調な需要によるものではなく、外的な要因で長期化しているため、給料がそれに追いつかない2023年のような厳しい年が今後も続いていく可能性が高い。