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緊縮財政と積極財政の目的と手段 わかりやすく

時事ニュース

積極財政と緊縮財政の目的と手段

積極財政と緊縮財政は、それぞれ目的と手段がある。

積極財政
・目的 冷え込んだ景気を回復させる
・手段 政府支出の拡大

緊縮財政
・目的 過熱した景気を一時的に冷ます
・手段 政府支出の抑制

積極財政と緊縮財政の目的は、どちらも景気を良くすることである。政府支出が手段として用いられるのは、支出が経済を左右するからである。


政府支出+民間支出=総支出

GDPを支出面からみると、総支出のうち、民間支出が3/4、政府支出が1/4を占めている※1

このうち政府支出を増やすと、総支出が押し上げられる。逆に政府支出を減らすと、総支出が引き下げられる。

積極財政の狙い 総支出の押し上げ
緊縮財政の狙い 総支出の引き下げ

総支出は過小になる時もあれば、過剰になる時もある。積極財政と緊縮財政は、その総支出の適正化を図っている※2



景気と民間支出

総支出の過不足は、民間の支出に起因している。

民間が支出を切り詰めると、総支出が過小になり、不景気になる。逆に民間が支出を膨張させると、総支出が過剰になり、景気が過熱する。

この総支出の過不足は、民間の支出に起因しており、民間の手では解消することができない。そこで出番となるのが、政府である。



景気と政府支出

政府は、景気に左右されることなく、支出を調節することができる。

不景気で総支出が少なすぎる時は、政府支出を拡大して総支出を押し上げることで、好景気に戻すことができる。

景気が過熱して総支出が多すぎる時は、政府支出を抑制して総支出を引き下げることで、適度な景気に戻すことができる。

このように積極財政と緊縮財政は、景気に応じて使い分ける。

積極財政を行うタイミング

  • 民間が支出を節約している時
  • 総支出が少なすぎる不景気の時

緊縮財政を行うタイミング

  • 民間が支出を膨張させている時
  • 総支出が過剰で景気が過熱している時


積極財政と緊縮財政は、あくまで景気の調整手段であり、政府支出は、総支出の適正化をするためのツールなのである※3


積極財政の条件

不況のときは、政府支出を必要な水準まで拡大する必要がある。しかし、これが可能な国と、そうでない国がある。

積極財政が可能な国
・自国通貨を持っている
・日本、アメリカ、イギリスなど

積極財政が十分できない可能性がある国
・自国通貨を持っていない
・ドイツ、ギリシャなど


日本は自国通貨「円」を発行でき、国債を円建てで発行しているため、積極財政がいつでも可能な国である。

一方、ギリシャは自国通貨を持たないため、積極財政が十分にできない可能性がある※4。積極財政が景気の調整手段として完全に機能するためには、自国通貨を発行できることが条件となる。


まとめ

最後に、積極財政と緊縮財政について要約しよう。

  • 目的は、好景気の実現
  • 手段は、政府支出による総支出の適正化
  • 条件は、自国通貨を発行できること

冒頭で書いた通り、景気を左右するのは、支出である。その中でも総支出を表すのが、名目GDPである。

三面等価の原則

  • 総生産(生産面からみたGDP)
  • 総所得(所得面からみたGDP)
  • 総支出(支出面からみたGDP)

支出面からみたGDPは、総支出のことである。つまり経済成長とは、総支出の拡大を意味する。

出典:国連『National Accounts (AMA)』名目GDP 自国通貨建

G7のGDPを総支出として見ると、次のような傾向が伺える。

日本以外のG7
・ほぼ毎年、総支出が増加している
・積極財政で総支出の適正化を図っている

日本
・総支出が全く増加していない
・緊縮財政を続け、総支出の適正化を図っていない


不景気で民間が財布の紐を締めている時に、政府まで一緒になって財布の紐を締めれば、不景気になるのは当然である。日本がG7を見習うべきなのは、総支出を引き上げるための積極財政に転換することなのである。





※1 ここで言う民間支出と政府支出は、GDP統計を支出面からみて区分している。厳密にいうと、民間支出は民間需要のことであり、その内訳は、民間消費+民間投資+民間の在庫変動である。政府支出は公的需要のことであり、その内訳は、政府消費+政府投資+政府の在庫変動である。本稿では民間と政府の2主体に集約したかったので、民間支出と政府支出と簡便に類型化させている。


※2 総支出の適正化という視点は、アバ・ラーナーの機能的財政論を参照

政府の第一義的な財政責任、その国の財とサービスに対する総支出が、供給可能な全ての財を名目価格で購入するより、多くも少なくもないように割合を維持することである。総支出が多いままにしておくとインフレになり、少ないままにしておくと失業を生む。

政府は、納税者の手元で使える貨幣を増やすために、政府支出の拡大や減税によって総支出を拡大できる。政府は、納税者の手元で使える貨幣を減らすために、政府支出の削減や増税によって総支出を削減できる。

この方法を駆使して、総支出を要求された水準に維持でき、それは、全ての就業希望者によって生産される限界まで財を購入するのには十分であり、潜在生産量を上回る需要によってインフレになるのには不十分である。

アバ・ラーナー「機能的財政と連邦債」

※3 政府は所得をコントロールすることはできない。が、政府支出の調節を通じて、総支出を部分的にコントロールすることは可能である。岸田政権が行っていた賃上げ政策は、政策と呼べるような代物ではなく、単なる企業への依頼にすぎない。



※4 ギリシャは、かつて自国通貨ドラクマを保有していた。紀元前の太古から伝わる貨幣で、中でもテトラドラクマは「ふくろう硬貨」として有名である。しかし2001年に自国通貨を放棄して、共通通貨ユーロに乗り換えた。これにより通貨発行権がギリシャ中央銀行から欧州中央銀行へ移譲され、通貨主権と財政主権が大幅に制限されることになった。


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