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【翻訳】イングランド銀行 季刊誌『現代の経済における貨幣:概論』前半

イングランド銀行
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イングランド銀行は、季刊誌現代の経済における貨幣:概論の中で貨幣について解説しています。この記事の…

原文を翻訳しました

記事を以下の通り、2つに分け、大まかにページ数を振りました。

  1. 要旨・イラスト付序文・本文
  2. 本文・結論・表A・囲み記事

本ページは、訳文前を掲載しています。

※1 この翻訳記事は”Money in the modern economy : an introduction and Money creation in modern economy.(Quarterly Bulletin 2014Q1)in the publication Quarterly Bulletin 2014 Q1, authored by Michael McLeay, Amar Radia and Ryland Thomas and copyright of the Bank of England 2014”の英文記事を、イングランド銀行の同意を得て翻訳したものです。
※2 原文のURLはhttps://www.bankofengland.co.uk/quarterly-bulletin/2014/q1/money-in-the-modern-economy-an-introduction
※3 イングランド銀行は、この翻訳文の校正と翻訳の精度や完全性に関する保証を一切行っていません。この翻訳のあらゆる複製は、イングランド銀行と訳者の承諾を必要とします。

※4 個人の翻訳である点、何卒ご了承ください。翻訳上の誤りや分かりづらい点は、訳者に責があります。
※5 原文のイタリック体の箇所は下線表記
※6 本文中に登場する3つのグラフは、スクロールの手間を省くため、同じグラフが何度も登場します。

要旨

イングランド銀行の貨幣分析ディレクター、マイケル・マクレイ、アマール・ラディア、ライランド・トーマス(1)(Michael McLeay, Amar Radia and Ryland Thomas of the Bank’s Monetary Analysis Directorate)


・貨幣は、現代経済の仕組みに欠かせないが、その性質は時間と共に大きく変化してきた。本稿は、今日の貨幣とは何か、を紹介する。

・今日の貨幣は、借用証書(IOU)の1種であるが、経済機構にいる万人が、財やサービスと引き換えに他人から受け取られると信頼しているため、特別なものである。

・大きく分けて3つの貨幣、通貨と銀行預金、中央銀行の準備金がある。各々は、他の経済部門に対する借用証書である。現代の経済における貨幣の大部分が銀行預金の形態であり、商業銀行によって独自に創造される。

現代の経済における貨幣 イラスト付き序文

自給自足の経済

万人が、自分達で生産したものを何でも消費する。

農家は野苺を消費し、漁師は魚を消費する。

物々交換

ある人が、他人が生産したモノを図らずも欲し、その逆も然りとすれば、交換は成立するかもしれない

農家は、野苺を漁師の魚と交換できる。

借用証書(IOU)の必要性

しかし、現実は、人によって欲しいと思うモノと頃合いは千差万別である。

借用証書(IOU)ー後日、誰かに返済する約束ーは、この問題を克服できる

夏に漁師は、野苺と引き換えに農家へ借用証書を手交できる。

すると、冬に漁師が捕獲物を所持している時、何某かの魚を農家に手渡すことで、この約束を満たす。

借用証書の複雑なネットワーク

しかし、大勢の人々が、様々な品物の借用証書を手渡す状況下で、時を移さず、秩序は極めて複雑になりー

ーそして決定的に、皆が皆、自分以外の人間全員を信頼している状況如何によるだろう

実線は財の流れ、点線は借用証書の流れを表す。

借用証書としての貨幣

貨幣は、広く信頼された借用証書の特別な形態である。中央銀行によって印刷される通貨や、人々が商業銀行に保持している預金の形態を取ることができる。それに加えて、商業銀行固有の目的として中央銀行によって保有される準備金は、貨幣のもう1つの形態である。


(1)作者は、本稿の作成に対するLewis Kirkhamの力添えに感謝の意を表したい。

本文

世界中で大半の人々が、財とサービスを売買したり、支払い代金を授受したり、契約書の作成や決済をしたりするために、1日単位で何らかの貨幣を利用している。

貨幣は、現代経済の仕組みの中核をなす。しかし、その重要性と幅広く利用されている状況にも関わらず、貨幣とは一体何か、についての普遍的合意がない。それは、貨幣の性質が時間と場所によって変化してきた事が理由として挙げられる。

本稿は、現代の経済における貨幣の役割を紹介する。目を通す前に経済学の予備知識を前提としない。記事は、貨幣の基本的な考え方とそれが特別な理由を説明する所から始める。

続いて、国民によって保有されているお金の97%が、通貨(1)より寧ろ銀行預金の形態にあるイギリスのような現代経済の下で貨幣と見做されるものを提示する。

その価値をどこから取得し、どのようにして創造されるのか、を貨幣の類型に応じて記述する。囲み記事は、近年の決済技術の発展について、その一部を簡潔に略述している。

この公報記事に対する姉妹編『現代の経済における貨幣創造(2)は、貨幣創造の過程を記し、その一連で通貨政策と中央銀行の役割について考察している。

観覧に供する目的のため、本稿は専らイギリスに焦点を絞っているが、検討されている事項は、今日における殆どの経済機構に等しく関係する。短い動画が、本稿が対象とする重要なテーマを幾つか解説している(3)

貨幣と見なされるものは何か?

沢山の様々な財や資産は、時と場所を問わず、貨幣として利用される。

は、人々の必要や欲求を満たすが故に価値があると評されるモノであり、例えば、食べ物や衣服、書物である。

機械等の資産は、財やサービスを生産する目的として利活用できるため、有用なモノである。

すると、財と資産のどちらが貨幣と評されるべきか?貨幣を定義する一般的な方法は、果たす機能を通してである。この手法が従来から提唱しているのは、貨幣が3つの重要な役割を担う点である。

貨幣の第1の役割は、価値の保存(store of value)になる事ー合理的に見通しがつく方法で、長期間に亘ってその価値を保つと期待される何らかの物である。

何百年も前に採掘された金や銀は、今日も依然として貴重である。しかし、傷みやすい食べ物は、腐敗するにつれて、やがて無価値になる。そのため、金や銀は価値の適切な保存であるが、傷みやすい食べ物はその水準に全く達していない。

貨幣の第2の役割は、計算単位(unit of account)になる事ー財とサービスが、例えば、メニューや契約書、値札などに即して値付けされる物である。

現代の経済における計算単位は、一般的に通貨であることが多く、イギリスのポンドが例として挙げられるが、その代わりに財の1種であったこともある。過去、品物が主食(小麦のブッシェル)や家畜等、ごくありふれたモノの見地からよく値付けされた。

第3に、貨幣は交換の手段(medium of exchange)でなければならないーそれ自体を目的として欲するのではなく、何か他のモノと交換する心積もりによって保有するものである。

例えば、第2次世界大戦の間、幾つかの捕虜収容所では、貨幣を欠いた状態で煙草が交換の手段になった(4)。禁煙者ですら、モノを煙草と進んで交換していた。それは、煙草を吸う目論みがあるためではなく、実際に欲しいモノと後で交換できるからである。

これらの機能は、相互と緊密に結び付いている。例えば、翌日になって値打ちが落ちるーすなわち、価値の有効な保存ではないー資産は、交換の手段として役に立たなくなる。

極めて高い物価上昇率やハイパー・インフレーションによって、従来の通貨が価値の乏しい保存と化した幾つかの国々では、外貨が交換の手段として代用されるようになった。

例えば、第1次世界大戦が終結してから5年の内に、財の値段がドイツ・マルク建てで38回、倍増したーつまり、1,918年の1マルクに相当したものが、1,923年には3,000億マルク以上だったことになる(5)

その結果、当時のドイツでは、外貨を売買の用途で代用し始める人々もいた。交換時にスターリング(sterling)の有効性が棄損されないことを確実にしておくため、イングランド銀行には通貨の価値を防衛する目的がある。

交換の手段は、価値の望ましい保存であるべきだが、交換の手段としては妥当でない価値の有効な保存が数多く存在している(6)

例えば、住宅はどちらかと言えば、相当の長期間にわたって金銭的価値を維持するが、決済として円滑に回流することは不可能である。

同じく経済において、交換の手段が計算単位(7)を兼ねるのは、一般的な見地からして能率的である。

イギリスの現地にある店舗が、支払いをスターリング建てでしか受領しない一方、商品をアメリカ・ドル建てで値付けした場合、顧客は何かを購入したい度に、スターリングとドルの交換レートを把握しなければならない。

これは、顧客の側で手間暇がかかる。そこで、今日の大部分の国々では、あらゆる通貨を換算した店頭価格が交換の手段である。イギリスの場合、ポンド(pounds sterling)(8)である。


(1)2,013年12月時点。本稿全体を通して「銀行」と「商業銀行」は、銀行と住宅金融組合を同時に指す。
(2)この公報の14~27ページを参照。
(3)www.youtube.com/watch?v=ziTE32hiWdk.を参照。
(4)ラドフォード(Radford,1,945年)を参照。
(5)サージェント (Sargent,1,982年)を参照。
(6)オストロイとスター (Ostroy and
Starr,1990)を参照。
(7)ブルンナーとメルツァー (Brunner and
Meltzer,1971) は、資産を計算単位として用いることで、交換の手段としての普及を後押しできる仕組みについて、詳細な説明を行っている。
(8)これは必ずしも多くの国々に妥当するとは限らず、今日、一部の取引に対して、交換の手段と計算単位が尚乖離した地域が存在している。ドゥプケとシュナイダー(Doepke and
Schneider,2013) が幾つかの事例を挙げている。

P6(3/10ページ目)

歴史的に見ると、交換の手段としての貨幣の役割は、経済学者からその最重要機能として見做されることが多い(1)

経済学の領域を創始した一員であり、20ポンド紙幣に印字されている現在の肖像アダム・スミスは、貨幣を必要最低限の経済や自給自足の経済から交換の経済へ移行する急所と見做した。

必要最低限の経済では、自分達で生産したモノに限って消費するしかない。

例えば、座礁して無人島で孤立したロビンソン・クルーソーは、採集した野苺と狩猟した動物を食べるだけなので、貨幣を必要としない(2)

しかし、人々が生産に特化し、自分達で必要とする量より多くの財を1つ生産して相互に取引した方が効率的である。

例えば、ロビンソン・クルーソーが天然の採食者である場合、そうすることで野苺の採集に注力できる間、腕利きの漁師である友人のフライデーは、時間を魚の捕獲に最大限割くことができる。

すると、2人はお互いに取引できる状態となり、各人は、時間を野苺の採集と魚の捕獲に分割するよりも沢山の野苺と魚を消費する(3)

借用証書としての貨幣

ロビンソン・クルーソーとフライデーが ー貨幣を使わずー 単純に野苺と魚を交換するだけであるのに対して、現代の経済で人々が執り行いたいと思う交換は、圧倒的に複雑である。

老若男女が関わっている(4)。そして-重要なことにーこうした交換のタイミングは、通常一致しない。

人々が、自分達で生産したモノと同種の財を決まって消費したい訳ではないため、消費を生産と同じタイミングで望むとは限らない。

フライデーが秋までに捕獲する魚の数がそれ程多くない可能性があるのに対して、ロビンソン・クルーソーが旬の季節を迎えた夏に採集する野苺は大量であるかもしれない。

現代の経済下において、若年層は、住宅を購入するために借入を希望する。高齢者は、退職後に向けて貯蓄したいと考える。さらに労働者は、給料日に全額使い切るより、月給を月単位で少しずつ支出する方に傾く。

こうした需要の分布は、借入を希望する人もいれば、期限内に他人から後日返済される債権ーまたは、借用証書ーを保有したい人もいることを意味する。

現代の経済における貨幣は、借用証書のまさに特別な形態であるか、または経済の会計用語で言う所の金融資産である。

貨幣を金融資産として理解するため、まず、人々が(個人的に、または企業として)保有する資産の広範な種類を検討することが有益である。この資産の一部が図1に示される。


【訳者補足】グラフの注釈はP6(3/10)に記載。以降、文脈に応じて再掲する。

資本(例えば、機械)と土地、住宅などの非金融資産は、水色で示される。それぞれの非金融資産は、その所有者を益するために財とサービスを生産する能力がある。

例えば、機械と土地は、製品や食料を作るために活用される。住宅は、人々に住まいのサービスと慰安を提供する。さらに金は、人々が願望する宝石などの形態に変換できる。

こうした非金融資産の中には(あるいは、人々が生産する財でさえも)貨幣の機能を部分的に全うできるものがある。他の用途に資する財や資産が貨幣として利用される時、それらは商品貨幣として知られる。

例えば、アダム・スミスは「鉄は古代スパルタ人の間で、銅は古代ローマ人の間で、広く行き渡った商業道具である経緯」を記した(5)

金を商品貨幣として利用してきた社会も多い。生得的に貴重な商品を貨幣として用いることで、人々が他の財と何時か交換できるだろうと信頼を寄せることに一役買う可能性がある。

しかし、こうした商品は、それ以外の用途-例えば、建設資材や宝石-を持つため、貨幣として使うにはコストが掛かる(6)。故に、現代の経済における貨幣は、それよりも寧ろ金融資産である。

金融資産は、もっぱら他人に対する経済的権利-人や企業、銀行、政府に対する借用証書ーである。金融資産は、非金融資産の所有者によって創り出すことができる。

例えば、土地の所有者は、将来時点における収穫の一部を見返りとして、土地の一部を農家へ賃借する決断に踏み切るかもしれない。

土地の所有者は従前より土地を減らすが、その代わりに金融資産-資産(土地)を活用する農家によって生産される見込み財(食物)に対する権利ーを抱えるだろう。

しかしながら、現実にある大半の金融資産は、実質上、他の金融資産に対する権利である。農場といった社債(企業の債券保有者に対する借用証書の一種)の購入を検討する人は大抵、食料で支払われることを望まない。

むしろ、債券等の契約は、農場が農産食品を販売することで獲得できるお金の一定額を、債券の保有者に支払わなければならないと規定している。


本文の注釈
(1)貨幣の歴史的起源は、議論を呼ぶ問題である。詳細は、マニング、ニーア、シャンツ(Manning、Nier、Schanz 2009)の第1章を参照。
(2)島で難破したロビンソン・クルーソーは、ダニエル・デフォーによる18世紀の小説に登場する空想上の人物。
(3)スミス(1,766)は「狩人の国で、隣人より弓矢を上手に作る才能がある場合、まずそれを進呈し、返礼としてゲームの進呈品を手にする」経緯を記した。
(4)スミス(1,766)は「労働の分業が最初に起こり始めた時、交換のこの力は、頻繁に、その商取引において大きく妨げられ、苦境に陥ったに違いない」と書き記した。
(5)スミス(1,766)。
(6)次節は、商品を貨幣として利用したり、貨幣を商品と結びつけたりする不利益を考察する。


図1 注釈
(a)図は、見やすさのためにかなり強調されている。図示された各資産/各負債の分量は、現実の経済数量と合致しない。
(b)統計の慣習により、金の保有資産(例えば、政府など)の一部は、会計上、非金融資産ではなく、金融資産として分類される。

P7(4/10ページ目)

金融資産は、経済社会にいる他人に対する権利であるため、同時に金融負債でもある-ある人の金融資産は、常に誰かの負債である。

グラフの注釈(a)(b)はP6(3/10)に記載。再掲。

そのため、図1(1)の通り、閉鎖経済における金融負債と金融資産の規模は同一である。ある人が抵当権を設定した場合、お金を長期間にわたって銀行へ支払う義務ー債務ーを取得し、銀行はその弁済金を受け取る権利ー同規模の資産(2)ーを確保する。

あるいは、社債を所有している場合、資産を有しているが、同規模の債務を企業は保有している。

それに対して、非金融資産は、他の誰かに対する権利ではない。ある人が住宅や幾何かの金を所有している場合、それに相当する金額を納付しなければならない相応の相手はいないーつまり、非金融負債は存在しない。

全ての経済主体が資産と負債を1つにまとめると、金融資産と金融負債ー貨幣を含むーは丸ごと打ち消し合い、非金融資産だけを残した状態になる。

貨幣が特別な理由

原則として、貨幣のような特別な金融資産が、財とサービスの支払い義務を負った人間を追跡する必要はない。

経済において、万人が何かを購入したい度に借用証書を差し出すことで、自分達の金融資産と金融負債を創出でき、全般的に見て借用証書における債務か債権いずれかの状態にある旨を元帳に書き付ける。

実際、中世のヨーロッパでは、商人が借用証書を発行することで、お互いに取引する慣行があった。さらに商家は、もっぱら債務を打ち消すことで、市場で相互に対する権利を定期的に決済していた(3)

しかし、そのような制度は、皆が皆、お互いを完全に信頼した状況に寄りかかっている(4)。さもなくば、現在保有している借用証書の中に、償還期限が到来する将来時点で返済しない人間が混ざるリスクを案ずるだろう。

たとえ、直接貸し出した相手を一様に信頼しても、当該の人物が信頼に乏しい人間から借用証書を取得し、それによって自身の借用証書を履行できない恐れがある。

貨幣は、信頼の欠乏という問題に対して、解決策を提供する社会制度である(5)。それは借用証書の特別な形態であるため、交換において便利である。

とりわけ、現代の経済における貨幣は、経済機構にいる万人が信頼する借用証書である。

誰もが貨幣を信頼しているため、財やサービスと交換して受け取ることに満足し-交換の手段として広く受容されるようになる。信頼に値する借用証書だけが、その状態に到達できる。

例えば、何某かの借用証書が返済されると広く信認されていない場合、交換で受領される可能性は低いー似たような類の貨幣も同様である。

次節では、現代の経済で貨幣として機能している借用証書の種類と、そうした特別な借用証書が交換で広く受容されるほど信認されるまでに至る仕方を説明する。

貨幣の様々な類型

前回の記事は、数多くの財や資産が貨幣の機能を部分的に果たし、今日の貨幣が借用証書の特別な形態であると解説した。さらに理解を深めるため、現代の経済で流通している様々な貨幣ーグループ間の借用証書を表している貨幣の各類型ーを幾つか検討することが有益である。

こうした貨幣の類型は漏れなく、様々な貨幣の一般用語と併せて、記事の末尾にある用語集(表A)に掲載されている。

本稿の目的に鑑み、経済機構が大きく分けて、3つのグループに分けられる。


【訳者補足】グラフの注釈(a)~(d)はP7(4/10)に記載。以降、文脈に応じて再掲する。

中央銀行(英国のイングランド銀行)。商業銀行(例えば、バークレーとロイド等の市中銀行)。そして、残りの民間部門の家計と企業であり、これ以降は「消費者」と呼ぶ。

経済評論家と経済学者は、しばしば、経済圏で流通している「広義の通貨」の総額に細心の注意を払う。これは消費者が取引の用途で利用可能な貨幣と解することができ、以下のもので構成されている。


【訳者補足】グラフの注釈(a)~(d)はP7(4/10)に記載。再掲

通貨(紙幣と硬貨)-中央銀行の、その大部分が経済活動を行う消費者に対する借用証書。銀行預金-商業銀行の消費者に対する借用証書(6)

広義の通貨は、経済に関わる支出の意思決定に責任を負う主体ー家計と企業ーの保有額を測るため、便利な概念である。

姉妹編の記事に登場する囲み記事は、様々な貨幣指標がどう実態経済について解き明かすことができるのか、を解説している。


【訳者補足】グラフの注釈(a)~(d)はP7(4/10)に記載。再掲

「ベース・マネー」や「中央銀行貨幣」とよく呼ばれる、貨幣の様々な定義には中央銀行の借用証書が含まれる。

この内、通貨(消費者に対する借用証書)と中央銀行の準備金、すなわち中央銀行の商業銀行に対する借用証書も包含している。

ベース・マネーが重要なのは(7)、中央銀行の通貨政策を措置する能力が、唯一のベース・マネー発行者としての地位に基づくためである。

姉妹編の記事は、イングランド銀行が様々な貨幣と連動して、経済の支出とインフレに影響を与えるため、準備金の付利金利を変動させる方法を説明している。


本文の注釈
(1)ロビンソン・クルーソーの孤島のような閉鎖経済は、外部の経済圏と何らの交換も行わない経済である。
(2)抵当権設定者が経時的に返済しなければならない金額の合計は、通常、当初の借入額より大きくなる点に留意せよ。後日返済される他ない借用証書を持つ不都合に対して、貸し手を補償するため、借り手は通常、負債の利子を支払わなければならないためである。
(3)中世の市場とその経済的意義は、ブラウデル(Braudel、1,982)によって詳しく考察されている。
(4)貨幣の存在意義に対する必要条件としての、信頼の欠如という意義は、清滝とムーア(Kiyotaki and Moore、2,001、2,002)の研究論文において重視され、周知の通り「邪悪は、あらゆる貨幣の根源だ」と主張している。コチェルクタ(Kocherlakota、1,998)は、取引記録の欠損が一方で必要条件でもある、と指摘している。ブルンナーとメツラー、キング、プロッサー(Brunner and Meltzer and King and Plosser 1,998)による初期の研究も、貨幣に代わる信用制度の活用を妨げる何らかの障害があるに違いない、と主張している。
(5)キング(King、2006)は、社会制度としての貨幣に関する詳細な説明を行っている。
(6)イングランド銀行に活用される広義の貨幣の定義M4exは、通常の預金よりも広い範囲の銀行負債を含めている。より詳しくは、バーゲスとジャンセン(Burgess and Janssen、2007)を参照。分かりやすくするため、本稿は預金としての負債を漏れなく記述している。
(7)スコットランドと北アイルランドの一部の商業銀行は、自行紙幣の発行を許可されているが、その通り実行するためには、イングランド銀行の銀行券やイングランド銀行に預託される準備金と同額を保有しなければならず、その発行によって、ベース・マネーが変化しないことを意味している。イングランド銀行の保有紙幣には、100万ポンド紙幣(Giants)と1億ポンド紙幣(Titans)が含まれる。


図2 注釈
(a)バランス・シートは各々を図示するため、高度に定型化されている。図示された各種の貨幣量は、部門別バランス・シートで実際に保有されている量と合致しない。
(b)中央銀行のバランス・シートは、ベース・マネーの負債とそれに相応する資産だけを図示している。実際の所、中央銀行は非貨幣負債を別に保有している。その非貨幣資産の大部分が政府債務である。政府債務は、イングランド銀行の資産買取基金(APF)に保有されているが、イングランド銀行の連結バランス・シートにその通り直接現れる訳ではない。
(c)商業銀行の非貨幣資産は、政府債務を含み、非貨幣負債は、長期債務と長期資本を含んでいる。
(d)消費者は、家計と企業の民間部門である。バランス・シートは、広義の貨幣資産とそれに相応する負債のみを図示している。消費者の非貨幣負債は、担保の有無を問わない貸付を含んでいる。





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